くだまきあーと

擬似よっぱらいOLがくだをまく、余生の日記。

本の感想「アルケミスト」「ひとりぼっちのソユーズ」

 

11月の読書として、「アルケミスト」と「ひとりぼっちのソユーズ」を読みました。

 

特段読みたいわけではなかった「アルケミスト」。作者の人生観を著した本、と聞いて、とりあえず読んでみるか、となりました。
スペインの少年が、夢のお告げと王様の教えに従いエジプトを目指す物語。その道のりは長く、険しい。全財産を盗まれたり、戦いに巻き込まれたりしながら、少年は旅をする。

 

要は、「自分の夢に邁進すること」の大切さを説いている本。「やりたいことができない」という不満を抱える全人類に、自分を信じて突き進もう、と鼓舞しているのだ。
わたしは高校生時代、空港で働きたかったことがある。初めて飛行機に乗ったその時から、空港が夢のような場所に思えたことがきっかけだった。そのために、公務員になろうと考えた。
結果的にわたしは公務員ではなく一般企業に就職した。しかしその時の気持ちを振り返ってみると、空港で本当に働きたかったのは、嘘だと思う。

小さい頃から安定志向だったわたし。父があまりしっかりした人ではなく、母の苦労を目にしてきたからだと思う。せめて自分くらいは食べるもの着るものに困らないようになろう、他人なんて頼りにしないで頑張ろう、と気を張っていた。
ある程度大人になったら、誰でもこんな思いを抱えていく。わたしは空港に憧れていたわけではない。国際色豊かで、いつでも賑やかで、夜も明るくて、ドラマがあり幻想的な空港が好きだっただけで、似たような場所やそこでできる仕事はいくらでもあった。自分の身の置き所はどこでも良かったはず。それを窮屈な自分の価値観に当て嵌めて、「公務員になりたい」と思っていた。本当は遠い場所に行きたかったのかもしれないが、公務員という、日本に縛られる仕事を選んでいた。

この主人公は旅をしてみたかったが、自分の中でためらいがあって、できなかった。しかし王様に背中を押され、旅の途中で出会った人々との交流を重ね、自分を信じて夢を叶えた。
作者はそんな少年のような生き方を現代人にもしてほしいのだ。そしてそのように生きていけばきっと、わたしは後悔なんてしなかった。

 

 

アルケミスト」の世界観に浸りながら読んだのはこのお話。

どうも元々はWeb小説らしい、ボーイミーツガール。

少年はある日、宇宙に憧れる少女にであう。少女の夢は月を目指すことだった。歳を重ねていくうちに二人はすれ違いも経験するが、少年は少女の夢を叶えるために、宇宙飛行士となる。

 

この作者はSFが好きらしく、色々なアニメや映画の要素が詰まっているようだ。あまりSF映画を摂取していないわたしからすると、ガンダムのセリフや世界観が強いかな?と思った。ガンダム(というよりZガンダム)は割と遠い星への移動もできるようになった世界観で、「重力に引かれた人々」との争いを描く。この小説の始まりは現代であり、そこまで宇宙開発の進んでいない世界観だが、ガンダムの序章をなぞっているようにも見える。

それはそれとして。上巻はボーイミーツガール、青春小説らしく少女と少年の出会いから夢を叶える経緯が描かれている。下巻はSF色が強くなり、結末は完全にSF映画のよう。もう少しコンパクトにまとめられそうなところが少々気になるところ。

アルケミストと同じところは、主人公が夢を叶えにいくところ。自分の望みを強く掲げ、自分を信じて邁進していくところ。本題はそれではないのだけれど、アルケミストを読んだ後だったので、強く印象に残った。「ユーリヤに会う」という思いを持ち続け、何万回でも過去をやり直す。二人一緒に宇宙に行く夢を叶えようとする。現実は、主人公の少年しか宇宙に行けず、少女は少年を宇宙に打ち上げて自分は行けなかった。

たくさんの可能性とそこから始まる未来が、少女と少年の出会いから花開いてゆき、枝分かれしていく。少年はその中の一つをまず選び取り、そこから何回もやり直して軌道修正して、結局少女との願いが叶わず巻き戻して違う未来を選んで…を繰り返し、自分がいるはずの未来までも変えてしまう。絶望しそうなところを持ち堪え、何度も何度も繰り返す。最終的にたどり着いたのは、少女と少年の運命が交ざりあう未来。

この物語はまさに、夢をかなえ少年少女の物語であったと思う。